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モスクワ経由パリ行き <旅立ち2>

モスクワ空港到着。    
燃料補給の為の待機。乗客はいったん空港内で待つように言われた。
広大な空港は閑散として、ボソボソっと人の話す声と、イミュグレーションに向かう乗客の足音だけが響いていた。6月も半ばを過ぎてるというのに、空気はひんやりとして冷たかった。

a0029889_13203754.jpg税関でパスポートを渡す。ガラス張りの向こう側で、口を一文字に結んだロシア人は微動たりともしない。氷のように冷たい表情の中で、唯一眼球だけが、パスポートと私の顔を行ったり来たりしている。まるで映画のワンシーンだ。私のロシア人のイメージはここで完成された。

出るといくつかお土産屋がある。派手な色彩をはなったベストやスカーフを横目に、コーヒーショップで時間をつぶすことにする。愛想の悪いウェイトレスにコーヒーを頼む。この国は娯楽と言うものがあるのだろうか、ふとそんな気がした。記念にマッチを貰って出た。

航路はパリへ。
数時間の待機後、再び機内の人となる。モスクワで降りた人がいた為、空席がでた。窓側の旅なれたビジネスマンが何やら英語で話かけてきたかと思うとすかさず後ろの空いた席に移動し、席2,3個の肘のバーを起こし横になった。なるほど、と感心するが自分には出来ない。お陰で窓側を確保できた。
夜中、機内の明かりは消され、スチュワーデスが同じく空いた座席にブランケット2、3枚持って来て横になって寝てしまった。これには思わず笑ってしまった。

なかなか寝付けなかった。頭の中でヨーロッパ大陸を描きながら、あと数時間後の自分を想像した。窓の外は暗黒だった。

あれだけ反対された海外行きを押しきって、私は今一人でここにいる。自分は何をしに行こうとしているのか、これからどんな人生がまっているのだろうか・・・突然不安になった。
小さい頃から好奇心や冒険心が旺盛で、不自由なく過ごした田舎時代。広い世界が見たくて東京へ飛び出した学生時代。しかし卒業と同時に気持ちは海外へ向かっていた。留学資金は、両親が貯めてくれた結婚準備金を当てる事でお願いした。フランス語の猛特訓、大学に出す書類の作成、神戸の仏領事館に夜行列車で行ったビザの申請、故郷の飛行場で見送ってくれた家族や親戚、沢山の友人たち。全てが走馬灯のように駆け巡った。

いよいよパリ!高鳴る鼓動を抑え、窓からの景色をまるで憧れの映画俳優でもみるかのようにうっとりと、そして、一寸も見逃さないよう見つめる。
時間調整の為上空で待機する、とのアナウンスが流れた。
飛行機はパリの上空を、機体を斜めに数回旋回した。飛行機が小さいせいか、よく傾いた。
私が座っていた左翼側が下を向いた時、眼下に、凱旋門、シャンゼリーゼ通り、ブーローニュの森、エッフェル塔が目に飛び込んできた。日本で見ていたパリの絵が今、目の前に広がっている。なんて美しいのだろう。身体が小きざみに震えた。

(つづく)

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*画像はあの時のマッチです。昨年の引越しの時、偶然にも天袋から出てきました。(驚)
瓶の中に入れ、そのまま何年も忘れ去られていたのです。触るとヒンヤリ冷たく、あの時の肌寒いモスクワ空港が思い出されるようです。
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by soleiljap | 2005-03-08 13:34 | ■ Parisのお話 | Trackback
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