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ムーラン・ルージュの見える家 <旅立ち4>
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エレベーターは5階で止まった。廊下には濃い青の絨毯が敷かれ、窓のない廊下で天井からの頼りげない明かりが、回りをまるで音のない映画の世界のように映し出していた。絨毯の上をこするスーツケースの音が微かに響き、私は喉の奥に渇きを感じながら二人の後をついて行っていた。廊下の突き当たりに彼女達が借りている部屋があった。

重厚な扉を押し開けると、若いカップルが出迎えてくれた。この家をシェアーしているもう一人の女性で、男性はボーイフレンドらしい。
自己紹介のあと、ジョンのガールフレンドは広い廊下を歩きながら、部屋の説明をしてくれた。
玄関を入ってすぐ右にキッチン。左には大きなリビング。その奥に玄関で出迎えてくれた女性の部屋があった。所々磨り減った木の廊下は、歩くたびにギシっと音をたてた。
廊下を突き当たって右に折れると、右手にバスルームとトイレ、その隣に空港に迎えに来てくれた友人の部屋。廊下突き当たりの最後の部屋がジョンのGF(K)の部屋だ。10畳くらいの部屋にベッドと机と本棚、備え付けのクローゼットだけの殺風景な部屋だった。本だけが棚から溢れ、彼女の勤勉さをあらわしていた。ここで寝るように言われた。とりあえず荷物を置き、日本から買ってきたお土産を出して急いでリビングに戻った。

a0029889_10156100.jpg広いリビングには、大きな木製の丸テーブルと不揃いのアンティークの椅子、安物の布張りのソファーが置いてあった。目をひいたのが天井の彫刻、中央に少女だろうか、天使のような顔がアールヌーボー調の彫刻に縁取られ、その下に金メッキを施した大きな鏡と大理石の暖炉が備えつけられていた。この天使は暖炉と鏡の上で、気の遠くなるほど大昔から、移り行く歴史と、この家の住人たちを見つめてきたのだろう。

ただオーナーの趣味なのだろう、薄紫色に塗られた壁と薄ピンクの天井が妙に違和感を感じた。シンプルに白かベージュにすればいいのに・・・あまりいい趣味ではないな、と思った。
私達はミント・ティーを飲みながら談笑した。甘いミントが疲れた身体に浸透していった。本当に美味しいと思った。

a0029889_7155498.jpg空港に一緒に迎えに来てくれた友達が窓の所に立って手招きする。窓辺に行くと、下には私達が歩いてきた大通り(クリシー通り)が見えた。指差す方を見ると、駅の先になんと、あの赤い風車のムーラン・ルージュが見えるではないか。ロートレックが描いた絵でも有名なムーランルージュである。が、何よりも、夜のとばりがおりる頃、男たちがこぞって集まる場所。である。

突然あらわれたムーラン・ルージュに私はちょっと戸惑っていたかもしれない。

『えっ?あっ!ムーラン・ルージュ・・・こんな近くにあるんだ!!』 
これだけ言うのが精一杯だった。

(つづく)

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*画像上・中は、その時リビングで撮ったもの。
*画像下も同じく手招きされた窓から向かいの建物を撮る。左ムーランルージュの方向も撮ったのですがよく撮れていませんでした。
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by soleiljap | 2005-03-11 10:27 | ■ Parisのお話 | Trackback
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