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『食堂かたつむり』
a0029889_22372524.jpg読んだのは随分前になるけれど、忘れないうちに感想を書いておきます。

以前、あるTVのお奨め図書コーナーでコメンテーターが、「この本を甘くみてはいけません」というようなことを言っていたので気になっていた本です。夫も同時期に読み出したので、よく食事の時に話題になりました。

テーマは一言でいうと「再生」。
失恋した女の子が故郷に帰り、料理を作ることで、そして、それを食べて貰うことで、心を取り戻していくというお話です。

読み始めてまず浮かんだのが、よしもとばななの世界。感傷的劇画が漫画のショットのように脳裏に浮かんでは消えてを繰り返していました。この人は、よしもとばななが好きなのかな、と思いながら読んでいましたが、途中から、そんなことなど忘れ、すっかり入り込んでいました。

随所の詩的な表現が素敵で、(手で上下に開閉する)店のシャッターを、ちゃんと閉じないセルロイドの人形の目に例えたり、夕日のシーンを、蜂蜜を入れたコップに沈んでいく太陽というように、ノスタルジックで常に映像が目に浮かんでくる文章はとても好感が持てました。

最後まで意表をつく展開もあきさせません。料理の描写もどれも実際食べたくなる料理ばかりだったし、何より、登場人物が魅力的。という点でも、面白い小説の部類にはいるのではないでしょうか。

ただ、もっと欲を言えば、ここまで魅力的なプロットで登場人物も個性的なのだから、もう少し物語(内容)に厚みがあったらよかったのにと思う。妾のおばあさんや、お母さんの愛人について、もっと深く書いてほしかった。大胆な展開の一つ、エルメスの解体部分も薄い印象。(詳しくは知りたくはないけれど・・・)

今、アマゾンの評価をみて驚いたのですが、ここまで評価が分かれるのも面白いですね。それだけ沢山の人が興味を持ったということでしょう。

私は、純粋に次の作品も読んでみたいと思いました。
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by soleiljap | 2008-10-29 23:41 | ◇ 本
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